気胸

気胸の正しい知識

胸骨、肺、肋骨、脊椎、縦隔、横隔膜

肺はどうしてふくらんでいるかご存じですか。肺は胸腔というスペースの中に存在しています。胸腔は肋骨、胸椎、胸骨で構成されている胸郭と下の横隔膜に囲まれた空間です。この空間は心臓や大血管を含む縦隔により左右に分離されます。形成された左右の胸腔内部の圧力は大気圧よりも低い陰圧です。気圧は高いところから低いところへ流れるという仕組みがありますので、肺胞の内圧が胸腔の内圧よりも高いことにより肺はふくらんだ形状で維持されています。健康な状態では胸腔内には拡張した肺が存在するためスペースはありませんが、そのスペースに空気がたまることがあります。

気胸とは肺の一部の開いた穴から漏れた空気が胸腔内にたまり、肺が自然につぶれてしまった状態(虚脱)です。気胸の多くは、空気がたまり風船のようになった肺胞の一部(ブラ病変)が破れることによる自然気胸です。自然気胸は特発性自然気胸、続発性気胸に分けられます。特発性自然気胸は気胸の中で最も頻度が高く、背の高いやせ型の10〜30代の男性に起こりやすい傾向にあります。続発性気胸は肺気腫・結核・がんなどの基礎疾患があることが多く、40代以上に発症しやすいと言えます。ほかには、生理に関連した月経随伴性気胸や肋骨骨折などの外傷に伴う外傷性気胸などがあります。

気胸になると胸腔内にたまった空気のために息が吸えません。多くの場合、突然の息苦しさや動悸、咳などの自覚症状があります。肩や鎖骨の辺りに違和感を感じたり、胸部や背中に鈍い痛みがあることもまれではありません。

気胸の予防

体質的に原因となるブラ病変ができやすい人がいらっしゃいますので、有効な予防法はありません。強いて言うならば、喫煙は肺気腫の誘因となりえるので、タバコはやめましょう。

気胸の治療

虚脱が軽度の気胸では安静にして自然治癒を待ちます。虚脱が中等度から高度の気胸では体外から胸腔内に管を挿入し、たまった空気を外に排出させる必要があります。管を挿入して症状の改善を図りながら穴が閉じるのを待ちます。穴がふさがれば気胸が治った(治癒)ということですが、穴が閉じなければ原因となっている箇所を取り除く手術も考える必要があります。

手術を行わず治癒した気胸の患者さんが気をつけることは、治癒しても再発を繰り返す場合や反対側の胸に気胸を発症する可能性があることです。当院のデータでは、特発性自然気胸を初めて発症した後の再発率は約40%、2回以上発症した後の再発率は約60%です。再発を繰り返す気胸では原因となるブラ病変の切除などの手術を行うことにより再発の予防が期待できます。

気胸の手術では胸腔鏡手術が行なわれることが一般的です。胸部に小さな穴を1~3か所開けて胸腔鏡を挿入してモニター画面で胸腔内の様子を確認しながら気胸の原因となる部位を治療します。術後の経過がよければ数日で退院し、早期に社会復帰が可能です。

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