腹膜透析とは
お腹の中には肝臓、胃、腸などの表面を覆っている「腹膜」と呼ばれる膜があります。これを使って血液をこしてしまおうというのが腹膜透析です。Peritoneal(腹膜)Dialysis(透析)、略してPDといいます。腹膜透析を行うためには、まず透析液を体 内に出し入れするためのチューブ(カテーテルといいます)を腹部に入れる手術が必要となります。カテーテル留置手術(通常局所麻酔)は30分から1時間程度で済みます。
腹膜透析の実際
まず腹膜に囲まれた腹腔内に透析液を注入します。透析液の出し入れは腹部に埋め込まれたカテーテルによって行います。一定の時間透析液を入れたままにしていると、腹膜を介して血液中の老廃物や余分な水分が透析液の中に移ります。これは拡散と浸透圧によって起こります。
一定時間が過ぎると、お腹の中の透析液に余分な水分や老廃物がたまってきます。今度はその透析液を外へ出し、新しい透析液を注入します。これをバッグ交換と呼びます。
CAPD
CAPDとはContinuous(連続的な)Ambulatory(携行可能な)Peritoneal(腹膜)Dialysis(透析)の略です。通常1日4回程度バッグ交換を行います。1回の交換にかかる時間は約20分です。CAPDの特徴は何といってもバッグ交換を患者さん自身で行うことです。バッグ交換は特に難しい作業ではありません。主治医やスタッフの注意を守って気を付けて作業すればどなたでも行えます。また24時間体の中でずっと透析をしているため、体にかかる負担も少ないといえます。
バッグ交換の手順
- カテーテルに新しい透析液バッグをつなぐ
- お腹に入っている透析液を排液バッグに捨てる
- 新しい透析液をお腹に入れる
- 注液終了後、バッグを切り離す
これで作業は終了です
CAPDの長所と短所
長所
- 頭痛や吐き気等を起こしている原因物質(クレアチニン・尿素窒素)の除去効果がよい
- 吐き気・嘔吐・めまい・頭痛等の症状が起きにくく比較的楽である
- HDに比べ血圧の変動等が少ない
- CAPDでは24時間絶えず老廃物の水分を取り出すため、HDに比べ食事制限は穏やかである
- シャントが不要である
- 穿刺の疼痛がない
- 血液の損失がない
- 特別な装置や水処理を必要としない
- 家庭で手軽に行うことができる
- 活動しながら透析ができる
- 社会復帰が容易である
- 旅行に便利である
短所
- カテーテルにより体外と腹膜が直接つながっているため、感染症(腹膜炎・出口部感染等)の危険がある
- 蛋白喪失があり、栄養状態の悪化を起こしうる
- 感染予防のため入浴の都度、カテーテルを保護する必要がある。したがって入浴がやや不便である
- 1~2㎏の透析液をお腹に入れるため腹部膨満が起こることがある
- 毎日のケア(バッグ交換・カテーテルケア等)が欠かせない
- 透析液にブドウ糖が含まれており腹膜よりブドウ糖が吸収されるため肥満になりやすい
食事について
CAPD療法の場合、食事、飲水は血液透析に比べて制限はゆるやかですが、全く自由というわけではありません。その制限は検査データ、飲水量、尿量などにより、かなり個人差があります。医師や看護師、栄養士ともよく相談して、自分に合った食生活を工夫することが大切です。
APD
腹膜透析のバッグ交換を自動的に行う方法です。APDはAutomated(自動)Peritoneal(腹膜)Dialysis(透析)の略です。就寝前に透析液のバッグを機械にセットすると、朝までに自動的に透析が終わります。APDの特徴は就寝時に何回かバッグ交換ができるため、日中のバッグ交換が最小限で済むことです。