肺がんの症状とは?
肺がんの症状とは?
肺がんは気管支や肺胞にある細胞の一部ががん化したものです。肺がんは無症状のまま病気が進行することが多い病気です。またあらわれる症状は肺がんの種類やステージ、また個人によって異なります。ここでは肺がんで一般的みられることの多い症状について紹介します。
- 肺がんの種類については下記の記事をご覧ください。
1.肺がんでみられる主な症状
肺がんは、初期の段階では症状はほとんどあらわれません。そのため、早期発見のためには日頃の検診受診が非常に大切です。
肺がんが進行すると、次のような症状があらわれることがあります(絶対的ではありません)。あてはまる症状がないか、チェックをしてみましょう。
症状チェックリスト
- 咳(時間とともに悪化する、あるいは治らないしつこい咳)
- 血痰(痰に血が混じる)
- 深呼吸や咳をすると胸や背中が痛む
- 息切れ、息をするとヒューヒューという音がする
- からだを動かすと息苦しい・動悸がする
- 発熱
- 声のかすれ
- 顔がむくむ
- 疲労感や倦怠感
- 原因不明の体重減少
- 食欲が減る
- 気管支炎や肺炎などの呼吸器の感染症を繰り返す
- 骨が痛む(がんが骨に転移している場合)
- 頭痛やめまい、ふらつき(がんが脳に転移している場合)
※注意:これらの症状はすべて、肺がん以外の病気によっても引き起こされる可能性があります。
2.肺がんのステージ別にみられる症状
肺がんは4つの病期(ステージ)に分類され、それぞれに症状や特徴があります。
- 以下に掲載するイメージ図はあくまでも一例です。
ステージ1(Ⅰ期)
ステージ1の初期の肺がんでは通常、がんは小さく、また肺の中にとどまっているため、自覚症状がないことが一般的です。検診などで偶然に肺がんが見つかることがあります。
ステージ2(Ⅱ期)
ステージ2の肺がんでは、がんが大きくなり、近くのリンパ節や組織に広がっている可能性がありますが、他の臓器への転移はまだありません。ステージ2の肺がんも症状がでない場合がありますが、人によっては以下のような症状が現れることがあります。
しつこい咳
2~3週間以上続くなかなか治まらない咳や、時間の経過とともに悪化する咳は、肺がんの症状である可能性があります。また咳こんだ時に痰が絡んだり、血痰が出ることがあります。
喘鳴(ぜんめい)
肺がんによって気道が狭くなることで、喘鳴(呼吸をするときに、ヒューヒュー、ゼーゼーなどの音がすること)が起こるなど、呼吸音が大きくなることがあります。
嚥下(えんげ)障害
肺がんが食道付近に広がると、食べ物を飲み込むことが難しくなることがあります。
息切れ
がんが成長して肺のスペースを圧迫すると、呼吸がしづらくなったり、息切れを起こすことがあります。
背中や胸の痛み
特に咳をしたときや笑ったとき、深呼吸をしたときなどに、胸や背中、肩などに痛みが生じることがあります。
ステージ3(Ⅲ期)
ステージ3の肺がんでは、がんは肺の近くの組織やリンパ節、または胸部の臓器に広がることがありますが、肺から遠い部位の臓器への転移はまだありません。ステージ3の肺がんの症状にはステージ1・2の症状の悪化に加え、以下のような症状があらわれることがあります。
顔や首の腫れ
肺がんがリンパ節に転移した場合にがんによって上大静脈(じょうだいじょうみゃく:頭や両手などに流れた血液が心臓に戻るときに通る血管)が圧迫され、顔や首が腫れることがあります。
発熱
肺がんが肺や他の臓器に転移をすると、炎症や感染を引き起こして熱が出ることがあります。また肺がんの種類によっては発熱や体重減少、食欲不振、倦怠感などの全身症状を引き起こすことがあります。発熱は肺がんのどのステージでも起こりえますが、進行したステージ(ステージ3または4)でより多くみられます。
声のかすれ
がんそのもの、または肺がんが転移したリンパ節が大きくなって反回神経(声帯の動きを支配する神経)を圧迫すると声帯の動きが悪くなり、嗄声(声のかすれ) が起きることがあります。
ステージ4(Ⅳ期)
ステージ4の肺がんは、最も進行した病期であり、通常、がんが肺から肝臓、骨、脳、その他の臓器など体の他の部位に広がっていることを意味します。ステージ4の肺がんの症状は、がんの広がる場所や範囲によって異なりますが、ステージ1・2・3までにみられる症状以外に、以下のようなものがあらわれる場合あります。
骨の痛み
がんが骨に転移している場合、特に背中、腰、肋骨などに痛みが生じることがあります。これらの痛みは、ステージ3の肺がんではあまりみられません。
息苦しさ
がんが肺を超えて胸膜に広がっている場合、胸腔(胸壁の内面と肺の表面の間)にたまった胸水が肺を圧迫して息苦しさを感じることがあります。
神経症状
がんが脳に転移した場合、頭痛や、めまい、てんかん発作、視力低下や言葉が出にくいなどの神経症状が生じることがあります。
黄疸(おうだん)
がんが肝臓に転移した場合、皮膚や白目が黄色くなる黄疸が生じることがあります。
疲労感
十分な休息をとっているにもかかわらず、疲労感や脱力感を感じることは、がんの一般的な症状です。
食欲不振、体重減少
食欲が出ない、食べ物が食べづらいなどの症状も、がんの兆候である可能性があります。これは肺がんが進行して食道が狭くなっている場合に、食べ物や唾液をうまく飲み込むことが難しくなるためです。
なお、これらの症状は他の病気によって引き起こされることもあり、必ずしも肺がんであるとは限りません。またすべての肺がん患者さんが同じ症状や同じ経過をたどるわけではなく、症状によってステージが決まるわけでもありません。肺がんでは初期には自覚症状がでず、症状が出たときにはがんが進行していることが多いため、定期的に検診を受診し、症状が出る前に早期発見・治療を開始することが重要となります。ここにあげた症状にあてはまるからといって自身で肺がんである、末期であるなどと自己診断をせず、早めに医師の診察を受けましょう。
このページで紹介したような症状が続くようであれば早めに医療機関を受診し、詳しい検査を受けることが大切です。特に喫煙者や肺がんの家族歴のある人、高齢者など、肺がんのリスクが高い人は、症状がなくても定期的な検診受診をお勧めします。
- 肺がんの病期(ステージ)については、下記の記事で詳しく解説しています。
岡山済生会総合病院ならびに岡山済生会外来センター病院では、内科医や外科医をはじめとする多職種による専門チームが、肺がんの症状緩和に対する治療も行っています。
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参考データ
日本肺がん学会 肺癌診療ガイドライン 2022年版
この記事を書いた人
川井 治之(かわい はるゆき)
所属
専門分野
呼吸器疾患(肺がん)
資格
- 日本内科学会認定内科医
- 総合内科専門医
- 指導医 日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医
- 指導医 日本呼吸器学会呼吸器専門医
- 指導医 日本禁煙学会指導医 日本がん治療認定医機構がん治療認定医 公認心理師 日本肺がん学会中国四国支部評議員 緩和ケア研修会修了 臨床研修指導医養成講習会修了