変形性膝関節症の原因や症状は?どんな人がなりやすい?

変形性膝関節症へんけいせいひざかんせつしょうは、膝関節の軟骨なんこつがすり減るために膝の痛みや腫れが生じ、膝関節の動きが悪くなり歩行しづらくなる疾患です。
変形性膝関節症を放置した場合、将来的に介護を要する状態になるリスクが約6倍ともいわれています(変形性膝関節症診療ガイドライン2023より)。このため、日常生活を維持するためには発症や進行を予防し、適切に診断・治療を行っていくことが重要です。

このページでは、変形性膝関節症の原因や現れる症状、なりやすい方の特徴について、詳しく解説します。

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変形性膝関節症の原因

変形性膝関節症は、膝関節の滑らかな動きを可能にする軟骨が、長年の使用と負担の蓄積によってすり減ることで起こります。
多くの場合、膝関節靭帯ひざかんせつじんたいや半月板の変性・断裂がきっかけとなって、膝の安定性や衝撃吸収機能が低下し、軟骨が次第にすり減っていきます。

日本人はもともと軽度のO脚オーきゃく(生理的内反膝)の方が多いといわれています。
O脚の方は膝関節の内側に特に負担がかかりやすく、内側半月板が変性・断裂することで半月板が関節外に押し出されたり(半月板逸脱)、内側の軟骨がすり減ることで膝関節の内側の隙間が狭まります。その結果、さらにO脚(内反膝…膝から下が側にる)が進行していきます。

O脚になるイメージ

変形性膝関節症の進行とあらわれる症状とは?

変形性膝関節症の症状のあらわれ方には、個人差があります。
ここでは、あらわれることのある症状の一例をお示ししています。

1.正常な関節

半月板のもつ膝関節の衝撃吸収機能が十分に機能している状態です。

2.関節軟骨がすり減りはじめる

初期では、動作開始時(立ち上がり、歩き始めなど)に膝痛が生じ、歩行中は痛みが軽減することが多いです。

膝関節に水が溜まることがあります。

3.関節軟骨が一部消失する

症状が進行すると、階段の昇り降りや正座など、特定の動きをした際に痛みを感じるようになります。

膝関節に水が溜まることが増えてきます。

4.関節軟骨がほぼ消失する

さらに関節軟骨がすり減って消失すると、歩行中だけでなく安静時にも痛みが続くなど、日常生活での支障が大きくなります。

また、膝の曲げ伸ばしの制限(可動域制限)も出現し、歩行時に膝の横揺れ(スラスト)が生じたりO脚が目立ってきます。

ヒアルロン酸注射も効きづらくなります。

5.関節の骨がすり減り始める

関節軟骨が消失すると、骨どうしが接触し強い痛みを感じるようになるため、短い距離しか歩けなくなります。

また、周辺の骨や軟骨、筋肉などの組織にも負担がかかり、炎症や変形が進みやすくなります。

変形性膝関節症になりやすい人はどんな人?

高齢の方

年齢を重ねると、筋力の低下や軟骨・半月板の変性によって衝撃吸収や柔軟性が低下するため、変形性膝関節症の発症・進行リスクが高まります。

杖を突く高齢者のイメージ写真

女性の方

変形性膝関節症は男性に比べて女性に多くみられます。
これは、女性では更年期以降にホルモンバランスの変化がおこり骨密度が低下するほか、男性に比べて筋力が弱く、膝関節にかかる負担が大きいためと考えられています。

膝が痛い女性のイメージ写真

肥満傾向の方

体重が増えると、膝関節への負担が大きくなります。
特に立っているときや歩行時には、自分の体重の数倍の負荷が膝にかかるため、変形性膝関節症を発症するリスクが高くなります。

体重が増加するイメージ写真

仕事やスポーツなどで膝に負担のかかる動作を多く行う方

膝に負担のかかる動作(深い屈伸やジャンプ、捻りなど)を多く行うスポーツでは、膝に強い衝撃がかかります。
また、農業や重労働など、膝に負担のかかる動作が多い方も、長年にわたって負荷が蓄積することで少しずつ軟骨が摩耗してきます。

過去の怪我や遺伝的要因のある方

過去の骨折(骨がずれて治った場合など)、靭帯断裂(前十字靭帯ぜんじゅうじじんたいなど)、半月板断裂(特に半月板切除術を受けた場合)、軟骨損傷などが原因で、膝関節の滑らかな動きや安定性が損なわれると、変形性膝関節症を発症するリスクが高まります。

また、遺伝的要因によって生まれつき膝関節の形や軟骨の質に異常がある場合も、変形性膝関節症のリスクとなります。

膝にけがをした人のイメージ写真

変形性膝関節症の発症・進行の主な要因は、半月板の変性・断裂です(過去に半月板を切除された場合も同様です)。

半月板がもつ膝関節の衝撃吸収機能が働かなくなることで、周囲の軟骨に過度な負担がかかります。
断裂形態によっては半月板を全て切除した状態と同じ程度の負担が軟骨にかかるとされるものもあります(内側半月板後根断裂ないそくはんげつばんこうこんだんれつ)。

レントゲン撮影では「異常なし」といわれても、MRIで半月板断裂と診断されることは少なくありません。痛みや腫れが続く場合は放置せず、早めに膝専門医を受診するようにしましょう。

参考サイト

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この記事を書いた人

釜付 祐輔かまつき ゆうすけ


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資格

  • 日本整形外科学会 専門医
  • 日本スポーツ協会公認スポーツドクター

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