婦人科領域のがん

婦人科領域のがんは、子宮頸がん、子宮体がん、卵巣がん、腹膜がん、外陰がん、腟がん、子宮肉腫など多岐に渡ります。診療ガイドラインに沿いながら、疾患や進行期、年齢等に応じて治療を行っています。手術、放射線治療、化学療法を総合的に駆使して治療を行います。場合によっては、外科や泌尿器科との合同手術も行っています。

当科には婦人科腫瘍専門医も在籍しており、患者さん、ご家族とともに十分にご相談をさせていただきながら、その時に一番良いと思われる治療方針を選択することに努めています。

下記に、代表的な疾患を記載します。

子宮がん

子宮がんは、子宮の入り口に発生する子宮頚がんと子宮の奥で月経を起こす子宮内膜に発生する子宮体がん(子宮内膜がん)の2種類があります。

子宮頸がん

発症年齢

子宮頸がんにかかる方は20歳代から増え始め、30~40歳代にピークがあります。また、20~30歳代の方にとっては、最もかかりやすいがんとなっています。

発生原因

ヒトパピローマウイルス(以下、HPV)というウイルスの感染が主な発生原因と言われています。

HPVは性交渉により感染します。HPVに感染しても90%の人においては免疫の力でウイルスが自然に排除されますが、10%の人出はHPV感染が長期間持続します。
このうち、自然治癒しない一部の人は、異形成とよばれる前がん病変を経て、数年以上をかけて子宮頸がんに進行します。

子宮頸がんの症状

初期ではほとんど自覚症状はありません。進行すると出血、特に性交後の出血などが現れることがあります。

子宮頸がんの治療
前がん病変(高度異形成)・上皮内がん・微小浸潤がん

妊娠・出産の希望がある場合には、子宮を温存する治療として、子宮の頸部の病巣を含めて子宮頸部を円錐状に切除する円錐切除術を行います。
妊娠希望がなく、子宮を温存する希望がない方には、子宮のみを摘出する手術(単純子宮全摘術)を行います。当科ではできるだけ低侵襲である腹腔鏡下手術を行っています。

浸潤がん

病期の進行期、持病の有無、年齢や妊娠希望の有無により、手術・放射線・化学療法(抗がん剤)を単独・もしくは組み合わせて行います。

担当医と十分に話し合って、最適な治療法を選択することが大切です。

子宮頸がんは早期発見・早期治療が重要です。1年に1階は子宮がん検診を受けて、早期発見に努めることが何よりも大切ですので、積極的にがん検診を受けることをお勧めします。

子宮体がん(子宮内膜がん)

発症年齢

50歳代が最も多く、40歳未満の婦人に発生することは比較的まれです。
しかし最近、若年者でも増加している印象があります。近年、わが国でも増加してきているがんです。

発生原因

子宮体がんにはエストロゲンという女性ホルモンが原因で発生するものと、エストロゲンとは関係ない原因で発生するものがあります。

エストロゲンが関係している子宮体がんでは、エストロゲンにさらされている期間が長いほど、発症リスクが高いとされ、原因として出産経験がない、閉経が遅い、肥満などがあげられています。

他方、このようなエストロゲンと関連なく生じるものもあります。このようなタイプの子宮体がんは、がん関連遺伝子の異常に伴って発生するとされ、比較的高齢者に多くみられます。そのほかにも高血圧、糖尿病、近親者に乳がん・大腸がんを患った方がいることなども危険因子として知られています。

子宮体がんの臨床症状

子宮体がんの患者さんの90%に不正性器出血がみられます。出血は褐色帯下(おりもの)だけの場合もあり、注意が必要です。不正性器出血が長く続く場合や、閉経後に出血がみられる場合は、婦人科を受診することが大切です。

子宮体がんの治療

子宮体がんの治療は手術が主体となります。
手術の基本は、子宮と両側の卵巣・卵管摘出です。がんがリンパ節に転移していないか、摘出して調べることもあります。
当科では早期子宮体がんに対しては、積極的に腹腔鏡下手術を行うようにしています。術後、組織検査で再発リスクが高い人には、化学療法(抗がん剤)や放射線治療を行います。

初期の子宮体がんや、その前がん病変とされる子宮内膜異形増殖症で、子宮を温存し妊孕能を維持して治療することを希望される方には、ホルモン剤を使って治療する選択肢もあります。ただし、適応や再発の問題もあり、主治医とよく相談することが必要です。

卵巣がん

発症年齢

一般に卵巣がんは40歳以降の婦人にできやすく、近年増加傾向です。
まれに20歳前後の若い人に発生しやすいタイプの卵巣がんもあります。

発生原因

一部の遺伝性腫瘍を除いて、原因ははっきりとはわかっていません。

卵巣子宮内膜症性のう胞(チョコレートのう腫)は眼科することがあることは分かっています。
その他、排卵回数が多い(出産経験がない、早い初経、遅い閉経)、肥満などがリスク因子です。

また、卵巣がんの約10%が遺伝性ということもわかっています。

卵巣がんの症状

卵巣がんは初期には症状は全くと言っていいほど現れず、卵巣にできた塊がある程度以上大きくなると、下腹が張る、腫瘤を触れるようになることがあります。
その他、月経異常や不正性器出血が出ることもあります。

卵巣がんは症状が出にくく、約半数の方が見つかったときにはがん性腹膜炎(腹水)という状態になっています。

卵巣がんの治療について

治療の基本は、手術によって可能な限り腫瘍を取ることです。具体的には子宮、卵巣、卵管はもちろん、骨盤内や腹部の大動脈周囲のリンパ節、さらにがんが転移しやすい大網という腸の表面を覆う膜を摘出します。

腫瘍の広がりが大きい場合には、術前化学療法を行うこともあります。術後は早期の症例を除き、化学療法(抗がん剤)を行います。また最近では、治療後に維持療法を行うこともあります。

BRCA1/2遺伝子の病的変化の有無や腫瘍の相同組換え修復欠損の有無で、適切な治療薬を選択します。

なお、BRCA1/2遺伝子に病的変化を認めた場合には、遺伝性腫瘍(HBOC)である可能性があり、遺伝カウンセリングを受けることをお勧めしています。

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