DMAT(災害派遣医療チーム)ってなに?
DMATとは?
DMATはなんで発足したの?そのきっかけは?
DMAT(ディーマット)とは、Disaster Medical Assistance Teamの頭文字をとった災害派遣医療チームの略称です。
1995年1月17日に起きた「阪神・淡路大震災」では、医療を提供できる体制が十分に整えられていませんでした。この地震で被災された方のうち、いつも通りの救急医療が提供されていれば、救命できたと考えられるいわゆる「避けられた災害死」が500名あまりにのぼる可能性が報告されています。
この災害は、当時の災害医療などの課題として社会で大きく取り上げられました。2005年4月、政府は「一人でも多くの人の命を助けよう」と、医療提供体制の一つとして日本DMATを発足させました。
DMATが出動する災害の種類は何?
DMATは大地震や風・水害などの自然災害のみならず、車両などの多重衝突事故、航空機の事故、列車の脱線事故などあらゆる災害で、多くのケガ人の発生が予測される場合に派遣され、現場に迅速に到着して医療を提供します。
さらに、最近では新型コロナウイルス感染症まん延などの影響もあり2022年2月、新な活動として、新興感染症に対する地域の医療提供体制支援もDMATの活動に加えられました。
DMATの活動は?
DMAT隊員の職種ごとの主な役割は?
DMATは、医師1人、看護師2人、業務調整員1人(薬剤師、診療放射線技師、臨床工学技士、理学療法士、事務員等)の3職種による計4人1チームを基本構成として活動します。
それぞれの職種の役割として、医師は医療を提供することはもちろんとして、メンバーを統括して指揮をとります。
看護師は診療補助や被災者・負傷者の身体および精神ケア等を行いながら、DMATメンバーの体調管理を行います。
業務調整員は事務的な業務から、メンバーの食事や宿泊手配、情報の電子入力など、チームとして医療が提供できるように全体の活動の下支えとなる重要な役割を担当します。
岡山済生会総合病院には、2023年12月現在、31人のDMAT隊員(医師9人、看護師12人、業務調整員10人)が所属しています。
DMATの活動はどんなものがあるの?
DMATの主な活動は多岐にわたっており、“これがDMATの活動”として限定されるものではありません。「すべては被災者のために」の理念のもと様々な支援活動を行います。
活動の一例は、厚生労働省「日本DMAT活動要領」の中に示されています。
DMATは発災直後に現場に急行して、トリアージ・緊急治療を行う現場活動のほかにも、被災地域内の医療機関や災害現場等において、災害対策本部の指揮支援、被災医療機関で対応が困難な患者さんの患者搬送、その他被災状況や等の情報収集・共有を行います。医療を提供することに留まらず、災害時に多くの役割を期待されています。
DMATは災害時以外に何をしているの?
DMATは災害以内の時は何をしているの?
DMATの活動の法的根拠は「災害対策基本法」にあります。普段は、病院の職員として働きますが、災害発生時には迅速に出動できるように準備をしておくことが大切です。
このため、厚生労働省が開催する技能維持研修や研修会、講習会に定期的に参加することで、技能の維持と新たな知識の習得に努めています。
DMATの訓練参加
さらに、国が開催する「大規模地震時医療活動訓練」、岡山県が主催する「地震対応訓練」、消防が開催する「緊急消防援助隊訓練」、岡山空港が開催する「岡山空港航空機事故総合訓練」など、数多くの訓練にも積極的に参加して、災害時の活動に備えています。
DMATになるには?
DMATになるために必要な資格は?誰でもDMATになれるの?
DMAT隊員になるために特別な資格は一切必要ありません。ただし「災害拠点病院」や「DMAT指定医療機関」に所属していることが必要です。
岡山済生会総合病院は、1997年に厚生労働省より「災害拠点病院」の指定を受けています。2010年4月26日には、岡山県とDMATの出動に関する協定を締結し、「DMAT指定医療機関」にも指定されています。岡山済生会総合病院で勤務する職員、皆にチャンスがあります。
日本DMATとローカルDMATの違いって何?
日本DMAT隊員になるために、新たな資格を取得する必要は特にありません。厚生労働省の委託事業として開催されている「災害医療派遣チーム(DMAT)隊員養成研修」を4日間にわたり受講することで隊員資格が認定され、厚生労働省の定める「日本DMAT」として登録されて日本DMATとして活動することとなります。
その他、DMATには、各都道府県で管理しているいわゆる「ローカルDMAT」があります。岡山県でも「おかやまDMAT隊員養成研修」が開催されています。日本DMATは日本全国で災害医療活動をします。ローカルDMATは、主に県内で発生した災害に対応を行います。
DMATに必要な知識や技術はあるの?
DMAT隊員になるために一番必要なことは何?
テレビドラマや報道の影響で、DMATになるためには救急医療の経験がないといけないと思われるかもしれませんが、決してそうではありません。救急医療の知識や経験があれば、災害現場で役に立つことは事実です。
この記事を書いた人
野﨑 哲(のざき さとし)
所属
救急科・救急医療
資格
- 日本救急医学会救急科専門医
- 日本医師会認定産業医
- 日本内科学会認定内科医
- 社会医学系専門医協会指導医
- 専門医
- 日本病院総合診療医学会病院総合診療医
- JMECCディレクター
- ICLSディレクター
- ISLSファシリテーター
- MCLSインストラクター
- MCLS-CBRNEインストラクター
- 日本DMATインストラクター
- 日本DMAT登録
- 統括DMAT登録
- 臨床研修指導医養成講習会修了