飲み込む力をきたえて誤嚥性肺炎を予防しましょう
誤嚥性肺炎とオーラルフレイルについて
誤嚥性肺炎とは?
日本人の死因第3位は「肺炎」です。そのうちの7〜8割は誤嚥性(ごえんせい)肺炎といわれています。誤嚥性肺炎とは、食物や唾液とともに口の中の細菌が気管に入ることで生じる肺炎です。嚥下※1(えんげ)(飲み込む)機能が低下することが要因の一つです。
※1)嚥下機能…食べ物を飲み込む機能
オーラルフレイルとは?
食べるために必要な口の機能が低下していくことを「オーラルフレイル」といいます。
オーラルフレイルは、可逆※2的であることが特徴で、早めに気づき適切な対応をしていくことで改善させることができます。滑舌の低下や食べこぼし、噛めない食品が増えたり、口の中が乾燥しやすいと感じるようになったらオーラルフレイルの可能性があります。
また、歯周病や虫歯を放置したり、義歯が合わずそのままにしていることもオーラルフレイルに大きく関連します。早めに歯科受診をして歯や口の健康状態を診てもらうことが大切です。口の中を清潔にしておくことも誤嚥性肺炎を予防するためにはとても大事です。
※2)可逆…いったん進行したものや変化したものを元の状態に戻すことができる
誤嚥性肺炎を予防するために
上手にムセ(咳)ましょう
ムセる(咳き込む)という症状は、気管に入りかけた(もしくは入ってしまった)異物を出そうとする、とても大事な防御反応です。高齢の方は、若い方に比べて嚥下(えんげ)機能が低下しているため、力強くムセる(咳き込む)ことで誤嚥による肺炎を防ぐことにつながります。
近年は新型コロナウイルス感染拡大防止のため、人前で咳をしにくいような状況でが、必要な時はしっかりとムセてください!
またムセる時には、腕で口元を隠す、とっさにマスクをつけるなどして、飛沫が飛び散るのを防いでくださいね!
体力維持・お口の管理をしましょう
新型コロナウイルスへの感染を避けるため、外出を控え、家での時間が増えていませんか。
定期的に通っていた歯科通院を控えていませんか。
家での時間が増えることで活動範囲が狭まり、身体を動かさなくなると、食べる量が減り、全身の筋力が低下していきます。全身の筋力が低下していくと、転びやすくなり骨折するリスクが高まります。
全身の筋肉を維持するためには、バランスのよい食事と適度な運動が欠かせません。しっかり噛んで食べることも口の筋肉を維持することにつながります。
新型コロナウイルスへの感染に気をつけながらストレスを感じて生活されていると思いますが、寒くなる時期はインフルエンザにも気をつけなければなりません。
しっかり食べて体力を維持し、冬を乗り切りましょう。
お口の体操で、飲み込む力をきたえましょう
飲み込む力をきたえることで、嚥下機能の低下を予防することができます。まず、ご自身で嚥下機能に問題がないか、チェックしてみましょう。
Let’ check
1 | 飲み込みの問題で、体重が減少した |
2 | 飲み込みの問題が、外食に行くための障害になっている |
3 | 液体を飲み込む時に、余分な努力が必要だ |
4 | 固形物を飲み込む時に、余分な努力が必要だ |
5 | 錠剤を飲み込む時に、余分な努力が必要だ |
6 | 飲み込むことが苦痛だ |
7 | 食べる喜びが飲み込みによって影響を受けている |
8 | 飲み込む時に、食べ物がのどに引っかかる |
9 | 食べる時に咳が出る |
10 | 飲み込むことはストレスが多い |
※3項目以上チェックがついた方は、嚥下機能に問題がある可能性があります。
上記のチェックの点数に関わらず、元気なうちから体操の習慣をつけておくことが大切です。
簡単なお口の体操
口の開閉(3回ずつ)
- 「あ〜」とゆっくり大きく口を開ける。
- しっかり口を閉じ、奥歯を噛みしめ、口の両端に力を入れ「ん〜」。
くちびるの体操(3回ずつ)
- 「う〜」と口をとがらせる。
- 「い〜」と横に引いて、上下の歯を出す。
舌の体操(3回ずつ)
- 口を大きく開ける。
- 舌をできるだけ長く出す。
- 次に上唇をなめる。
- さらに口の両端をなめる。
- 最後に唇を閉じ、舌で上下の歯列の外側をなぞりながらなめる。
- 唾液が出てきたら、意識して飲み込む。
日頃から繰り返し体操を行うことが大切です。
また、歯磨きをして口の中をキレイにしておくことも誤嚥性肺炎の予防に効果的です。
飲み込む力をきたえて肺炎を予防しつつ、いつまでも元気に美味しく食べましょう!
※本記事は広報誌「やわらぎ」152号(2018春号)および168号(2020晩秋号)に掲載したものをWEB用に再編集したものです。
この記事を書いた人
木村 貴子(きむら たかこ)
資格
- 摂食・嚥下障害看護認定看護師