がんの痛みと緩和ケア
がんの痛み
がんの痛みの特徴
- 痛みは早期、末期といった病気の進行度にかかわらず起こる
- 進行がんになると患者さんの7割で痛みが最大の苦しみとなる
- 激しい痛みが1日中続く
- 痛みが続くと、眠れず、食べられず、考えられなくなるといったように、日々の生活の基盤がすべて破壊される
- モルヒネなどの鎮痛薬を適切に使えば、がんの痛みの9割以上を取り除くことができる
がんの痛みの原因
- がん自体が原因となった痛み、内臓や骨転移など
- がんに関連した痛み、床ずれや便秘の痛みなど
- がん治療に関連して起こる痛み、手術瘢痕や慢性的な痛みなど
- がん患者さんに併発したがん以外の疾患による痛み、変形性脊椎症、骨関節炎などの痛み
痛みの治療
治療の目的
- 痛みに妨げられない睡眠時間の確保
- 安静にしていれば痛みが消えている状態の確保
- 起立したり、身体を動かしたりしても痛みが消えている状態の確保
WHO方式がん疼痛治療法(WHO:世界保健機構)
痛みには強さや質に個人差があります。それゆえ、個々によって有効な薬剤の種類や量が異なります。初めは少量から、徐々に量を増やしていきます。鎮痛に必要なモルヒネの量は1日量として20mgから6,000mg以上と患者さんごとに大きな差があります。また、薬の量が多いから病気が重いということではありません。
5つの原則
- できるだけ経口投与にする
- 時刻を決めて規則正しく繰り返して使う
- 痛みの強さに応じた効力の薬を選ぶ
- 個々の患者さんの痛みが消える個別的な量の薬を使う
- 個々の患者さんの痛みが消える個別的な量の薬を使う
3段階がん疼痛治療指針
鎮痛薬は、モルヒネ、コデインなどのオピオイド系と、アスピリンなどの非オピオイド系に分けられます。 軽度の痛みには非オピオイド鎮痛薬を使い、中等度の痛みにはそれより効力の強いコデインを加えていき、さらに高度の痛みにはモルヒネを用います。
痛み治療についての誤解
- 痛み止めの薬は身体に悪い?
- 身体に悪いとは迷信で、適切に使う痛み止めの薬は日々の生活状況を改善させる。
- モルヒネは廃人をつくり、命も縮める?
- モルヒネを安全かつ有効に使う方法が開発されており、廃人をつくったり、命を縮めることはない。
年余にわたる長期間モルヒネを使い、痛みから解放され、普通の生活を送っている患者さんが大勢いる。
- モルヒネを安全かつ有効に使う方法が開発されており、廃人をつくったり、命を縮めることはない。
- モルヒネを使い出すとやめられなくなる?
- 痛みに対してモルヒネを長期間使っても薬物依存者になることはない。モルヒネを使う必要がなくなったときには、安全にやめることができる。
- 緩和ケアは死が近づいた人のためのものだ?
- 痛みをはじめとするつらい諸症状を緩和して日々のQOL(生活の質)を向上させる緩和ケアは、死に近づいた患者さんだけでなく、あらゆる病人が必要としている医療である。
がんの痛みの自己管理
痛み治療の目的は痛みが消えること
- 痛みが消えてこそ、初めて患者さんは不安と恐怖から解放される
- 痛みへの挑戦に勝つ
患者さんと医師の協力が必要
- 痛みは患者さん本人しか感じられない
- 薬の効いた程度がわかるのも患者さんだけ
- 医師と患者さんのコミュニケーションが大切
- どんな名医でも、患者さんに聞かなければ痛みの強さを把握できない
- ×「医者なのだから、黙っていてもわかってもらえる」
- ×「痛いと伝えたのだから、覚えていてくれるはず」
- ×「しつこく言うと嫌われるのではないか」
伝え上手になろう
- 痛みの強さ
- どのくらい痛いのか(軽い、中くらい、強い)
- 痛みの経過や性質
- いつから
- どの部位に
- どんな性質(うずく、さしこむ、押さえつけられる、刺すような、など)
- 持続しているか、時々か
- どんなときに悪化するか、軽くなるか
患者さんの役割
- 痛みが発生したら必ず訴え、痛み治療を求め、治療が始まるまで訴え続ける。
- 治療内容の説明を聞き、疑問について質問し、医師や看護師に専門的な意見を求め、同意・不同意を明確に表現する。
- 同意した治療内容は、決められたとおりに受ける。
- 治療が始まっても痛みが消え去るまで「痛い」と訴え続ける。
- 問題と感じることがあれば、いつでも率直に話し合いを求める。
緩和ケアとは
世界保健機関(WHO)は、「緩和ケアとは、生命を脅かす疾患による問題に直面している患者とその家族に対して、痛みやその他の身体的問題、心理社会的問題、スピリチュアルな問題を早期に発見し、的確なアセスメントと対処(治療・処置)を行うことによって、苦しみを予防し、和らげることで、クオリティ・オブ・ライフを改善するアプローチである」と提言しています。
「緩和ケア」は、単に身体症状のコントロールだけでなく、心のケアも同時に行い、患者と家族のQOL(生活の質)を積極的に全体的に高めることを目的とします。
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