見直そう生活!防ごう認知症!~糖尿病と認知症、実はつながっている~
糖尿病と認知症は関係している?
誰でも年齢を重ねると物忘れが増えたり、身の回りのことができなくなったりしますが、中でも糖尿病と認知症には深い関係があることをご存じでしょうか?
認知症とは、さまざまな要因により脳の神経細胞の働きが衰え、記憶や判断力といった認知機能が低下して日常生活に支障をきたす状態をいいます。
糖尿病患者さんは糖尿病でない人と比べて、アルツハイマー性認知症が1.5倍、血管性認知症※が2.5倍起こりやすく、糖尿病は認知症のリスクになることが明らかになっています。
※血管性認知症…脳血管障害(脳卒中)によって起こる認知症のこと
なぜ糖尿病だと認知症リスクが高くなるの?
糖尿病になると、血液中のブドウ糖の濃度が高くなります(高血糖)。
この状態が長く続くと動脈硬化が進行し、血流が滞って脳組織に十分な血液が行きわたらなくなります。
その結果、脳神経の機能が障害されて認知機能が低下し、血管性認知症を発症します。
一方で、糖尿病の方が認知症になると、薬を飲み忘れたり、血糖値の管理がうまくできなくなったりするため、糖尿病の悪化につながります。
そうならないために、糖尿病の方は日頃から血糖値を適切にコントロールし、認知症の発症を予防することが大切です。
すでに糖尿病になっている人がすべて認知症になりやすい状態というわけではありません。
糖尿病の方でも治療によって血糖値を適正にコントロールできていれば、認知症になるリスクを下げることができます。
認知症の症状とは?
代表的な認知症の症状には、以下のようなものがあります。
もの忘れが目立つ
- いつも物を探している
- 食事をしたことを忘れる
時間や場所で戸惑う
- 日付、曜日がわからない
- 道に迷う
今までできていたことができなくなる
- 同じものばかり買ってしまう
- 3日続けて同じ料理を作る
- お金の管理ができなくなる
人柄や性格がいつもと違う
- 必要以上に怒る
- 日課や趣味をしなくなる
- ぼんやりしていることが多い
- 物を盗られたと言う
認知機能の低下や認知症になりやすい人は?
以下のような場合、認知症の発症リスクが高くなります。
- 運動不足の方
運動不足だと脳への血流が不足し、認知症の原因となるたんぱく質(アミロイドβ)が脳に蓄積します。 - 脂肪分の多い食事を好む方
動物性脂肪の中に含まれる飽和脂肪酸は悪玉コレステロールを増やし、摂取しすぎると脳梗塞や血管性認知症の発生リスクが高まります。
※サバやサンマなどに含まれるオメガ3系脂肪酸(n-3系脂肪酸)には、認知症の予防する可能性があるという研究もあります。 - うつ病の方
うつ病がある方では認知症リスクが約2倍になります。 - 睡眠時間が短い/長い方
睡眠時間が短い(5時間未満)または長い(9時間以上)方は、適正な方(7時間程度)と比べて認知症発症のリスクが高くなります。 - 糖尿病未治療の方
糖尿病を治療しないまま放置していると、高血糖状態が続いて認知症を発症しやすくなります。 - 高血糖の方、重症低血糖※の方、血糖値の変動が大きい方
認知機能の低下は、血糖値が高いほど起こりやすくなります。
また、重症低血糖で脳にエネルギーが供給されなくなっても、認知機能の低下を招きます。
血糖値の変動が大きい場合も、認知機能の低下や脳の萎縮が起こりやすくなります。
※…回復に他の人の助けが必要なほどの低血糖状態 - 動脈硬化の方、脳卒中の方
高血圧、脂質異常症などの動脈硬化の危険因子がある方や、脳卒中がある方は認知症になりやすくなります。 - 低栄養の方、フレイル(体重減少、疲労感、筋力低下、歩行速度低下、活動量低下)の方
低栄養になると脳のエネルギー源が不足し、認知機能が低下します。
また、フレイルも認知機能が低下する要因となります。
認知症を予防するためにできること
認知機能の低下や認知症を予防するために、以下のようなことに気を付けて生活をしましょう。
- 日頃の生活を見直し、血糖値や血圧、脂質の摂取量、体重を適切に管理しましょう
- 禁煙をしましょう
- 適度にからだを動かしましょう
- 質の良い睡眠をとりましょう
- 人との交流を楽しみましょう
※本記事は広報誌「やわらぎ」(148号:2017年夏号)に掲載したものをWEB用に再編集したものです。
この記事を書いた人
脇本 美香(わきもと みか)
所属
岡山済生会外来センター病院
資格
- 糖尿病看護認定看護師