脳卒中後に起こりやすい「見えない障害」、高次脳機能障害ってなに?

高次脳機能障害とは

人間には、記憶をしたり、判断をしたり、学習をしたりする高度な脳の機能が備わっており、これらの知的な機能を総称して高次脳機能こうじのうきのうといいます。

高次脳機能障害こうじのうきのうしょうがいとは脳卒中などの脳血管疾患や、交通事故などによって脳が損傷をうけることにより、言語や記憶、注意、情緒といった知的な機能に障害が出て、日常生活や社会生活に支障が出てしまう状態のことを指します。

外見からは見えにくい障害のため「目に見えない障害」、「隠れた障害」ともいわれています。
日常生活や職場など、社会生活を送る中で問題が顕著に表れてくることがありますが、見た目で判断がしづらいために周囲から理解されにくく、本人や家族にとっては負担やストレスになりやすい障害です。

頭を抱える人物のイメージ画像

高次脳機能障害の症状

代表的な高次脳機能障害の症状としては、以下のようなものがあります。

高次脳機能障害でみられる症状(一例)

  • 相手の話すことは理解できるが、自分では言葉を発することができない(失語症)
  • 流暢りゅうちょうに話すことはできるが、言い間違いが多い
  • 相手の話すことが理解できない
  • 人の名前や、場所や日付などが思い出せない(記憶障害)
  • 二つのことが同時にできない、物事に集中できない(注意障害)
  • 段取りが立てられない、臨機応変な対応ができない(遂行機能障害)

※これらは一例であり、人によって出現する症状はさまざまです。

高次脳機能障害の治療と対応時のポイント

高次脳機能障害の治療は、社会生活や日常生活への適応向上を目的としたリハビリテーションが基本です。
リハビリテーションを行うことで脳の損傷を受けた部位以外の部位が、失った機能を補完するようになるまでのスピードを向上させることができます。

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高次脳機能障害の方への対応の基本は、

  • ゆっくり、わかりやすく、具体的に話をする
  • 内容を忘れたりする場合はメモを取ってもらう
  • 疲労やイライラする様子が見られたら、休憩や気分転換を促す
  • 焦らず個人のペースに合わせて関わる

などです。

本人は、日常生活や対人関係がうまくいかず、ストレスを感じていることが多くあります。
自信をなくしたり、混乱や不安の中にいることを理解しましょう。

向き合って会話をする人物たちのイメージ写真

脳卒中の後遺症には、目に見えるものもあれば、目に見えないものもあります。
さまざまな後遺症に理解のある方が増えていくことを願います。

高次脳機能障害の原因は?-脳卒中が引き金になる場合も

高次脳機能障害は脳卒中などの病気や、事故などで脳の一部が損傷によって引き起こされることがあります。

脳卒中には、脳の血管が詰まる「脳梗塞のうこうそく」や、脳の血管が破れる「脳出血」などがあります。
脳卒中になると麻痺や言語障害が生じたり、さまざまな後遺症が残ることがあります。

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脳卒中のサインを見逃さないために~FAST(ファスト)を確認しよう!

脳卒中の治療は時間とのたたかです。
特に脳梗塞の場合、発症後すぐであれば詰まった血の塊を溶かす薬剤を用いる「t-PA治療(血栓溶解療法)」により救命率が上がり、後遺症が軽減する可能性があります。
ただし、t-PA治療は発症後4.5時間以内に治療を開始する必要があります。

次のような症状は脳卒中のサインとされるものです(それぞれの頭言葉をとって「FAST(ファスト)」と覚えてください)。
これらの兆候がみられたら、すぐに医療機関を受診をしてください。

FASTを確認してみましょう

Face(フェイス):顔

にっこり笑ってみてください。
片方の口や顔が下がっていませんか?

顔の片方が下がっている人物のイメージ画像

Arms(アーム):腕

両手を上げてみてください。片方の手が下がってきませんか?
上げたまま、維持できますか?

腕上げテストで片腕が下がる人物のイメージ画像

Speech(スピーチ):言葉

簡単な文章を言ってみてください(例:今日は寒いですね)
呂律が回っていますか? 言葉が理解できますか?
言葉の出にくさはないですか?

Time(タイム):時間

以上の3つのチェック項目(顔・腕・言葉)のうち、どれか1つでも該当したら、脳卒中の可能性があります!
脳卒中は時間との勝負です。一刻も早く医療機関を受診してください。

病院に問い合わせをする女性のイメージ画像

脳卒中の発症を防ぐために大切なこと

脳卒中の最大の危険因子は高血圧です。

血圧が高い人ほど、脳卒中を発症するリスクは上昇します。
高血圧を治療すると、脳卒中の発症リスクが40%低下すると考えられています。

現在、糖尿病・脂質異常症といった生活習慣と深く関係する疾患を抱えている人たちが増えています。また、飲酒や喫煙、肥満などの生活習慣も脳卒中の発症に関係しています。

脳卒中はいつ起こるかわからない病気ですが、生活習慣を改めることにより、発症率も大きく変わってきます。

まずはご自身の危険因子を知り、その危険因子を減らすように努めましょう。
また、ご自身の普段の生活を見直して、予防に努めましょう。

脳梗塞予防のため、日常の中で意識したいこと

水分摂取


お茶を飲む女性のイメージ写真
  • 寒い季節などは水分摂取が少なくなりがちですが、意識的に水分を摂取するようにしてください。
  • 水分は一度に大量にとるのではなく、こまめにとるようにしましょう。

運動・睡眠も重要 


散歩をする人物のイメージ写真
  • ウォーキング・ジョギング・散歩など適宜運動を行い、運動不足を解消することを心がけてください。
  • 質のよい睡眠をとることも大切です。運動後の疲労も溜めないようにしましょう。

※本記事は広報誌「やわらぎ」139号(2016冬号)、158号(2019春号)および177号(2022初夏号)に掲載したものをWEB用に再編集したものです。

この記事を書いた人

田代 紗往里たしろ さおり


所属

岡山済生会外来センター病院

資格

  • 脳卒中リハビリテーション看護認定看護師

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