糖尿病センター
糖尿病センター
糖尿病センター
糖尿病は血液中のブドウ糖濃度(=血糖)が高くなり、それが原因となって全身の臓器に様々な合併症を引き起こす病気です。
糖尿病性網膜症(失明原因の第2位)、糖尿病性腎症(血液透析の原因として最多)、糖尿病性末梢神経障害は3大合併症といわれ、患者さんの生活に大きな影響を及ぼし ます。また、狭心症や心筋梗塞、脳梗塞、下肢の動脈硬化症、足潰瘍や壊疽など、動脈硬化を基盤として起こってくる病気も非常に起こりやすくなります。
糖尿病センターでは、こうした糖尿病の合併症の予防・進行防止のため、さまざまな医療スタッフがチームを組んで治療を行っています。
糖尿病治療は食事療法や運動療法が基本となり、その上に薬物治療が加わりますが、こうした治療をきちんと行うためには医師、看護師、管理栄養士、薬剤師、理学療法士、臨床検査技師、医療ソーシャルワーカー、保健師、臨床心理士など多くの医療スタッフの協力が必要です。糖尿病センターでは、専門的知識を持ったこれら医療スタッフが連携して糖尿病治療に取り組んでいます。合併症治療においては、眼科・腎臓病センターをはじめとする院内各科・各センターとの連携を密にし、必要に応じて院外の専門病院との連携も行っています。また、地域の開業医の先生方との連携も密にし、病診連携を積極的に進めています。
スタッフ紹介
- 糖尿病内科医師(糖尿病専門医(指導医を含む)、専攻医)
- メディカルスタッフ(看護師、薬剤師、管理栄養士、理学療法士、臨床検査技師、保健師など)
- 関連各科(眼科、腎臓内科など)
がチームを組み、糖尿病診療を行っています。
メディカルスタッフのうち、27名が日本糖尿病療養指導士の資格を有しています(2022年現在)。
当院は日本糖尿病学会認定教育施設にも指定されています。
糖尿病教育入院
2型糖尿病は遺伝的な要因に加えて、その発症や悪化に食事や運動習慣、日常生活、仕事などの生活そのものが深く関係しています。糖尿病を上手に管理していくためには、生活全般を見直し、改善すべき点を見つけ、そしてそれを良い方向に変えていくことが必要不可欠となります。
糖尿病の教育入院は、このような生活習慣を見直し、糖尿病治療に必要な知識や方法を勉強していただく場です。もちろん、それと同時に食事療法・運動療法・ 薬物治療により血糖のコントロールを行います。合併症の状態の評価や必要に応じてその治療も行います。退院後、自分で自分の糖尿病を管理し、良好なコントロールを維持していけるように、糖尿病の管理方法を身につけていただくことが目標です。
当院では、入院期間として1週間の入院を基本としています。日曜日が入院日となり、土曜日が退院日となります。その間、毎日(月曜日から金曜日まで)糖尿病教室に参加していただきます。
糖尿病教室
月曜日から金曜日まで毎日午後2時から糖尿病教室を開催しています。1週間で1クールとなっています。教育入院中の方は皆さん参加していただきます。
当院に通院されていない方でもご自由に参加していただけます。
リンクのご案内
「血糖トレンド」とは、糖尿病の管理における新しい概念です。睡眠時も含め24時間連続でグルコース値を測定する技術により、患者さんや医師が血糖トレンド(変動)を「見える化」できるようになりました。下記のWebサイトでは、血糖コントロールの重要性、および「血糖トレンド」の概念とその活用方法について紹介しています。
外来診療
インスリンポンプ外来
主に1型糖尿病患者さんに対する専門外来として、2018年11月から「インスリンポンプ外来」(毎週木曜日、担当:利根 淳仁)を開設しています。
インスリンポンプの導入依頼やインスリンポンプ治療に関する疑問など、お気軽にご相談ください。
先進医療糖尿病治療
当院では、持続皮下インスリン注入療法(インスリンポンプ療法)(CSII: continuous subcutaneous insulin infusion)や持続血糖測定(CGM: continuous glucose monitoring)など先進的な治療を、患者さんの病態に応じて積極的に導入しております。経験豊富な医師、メディカルスタッフによる万全のサポート体制により、安心して医療を受けることができます。2022年4月現在、当院でインスリンポンプ療法中の患者数は87名、SAP(リアルタイムCGMを搭載したインスリンポンプ)療法中の患者数は56名です。
従来のインスリンポンプ ミニメド640G(日本メドトロニック社)は、リアルタイムCGMで低血糖を予測して自動的にインスリンの注入を一時停止し、血糖の回復を確認すると自動的にインスリンの注入を再開する予測低血糖一時停止機能(Predictive Low Glucose Management: PLGM)を搭載していましたが、2022年1月にはさらに進化したハイブリッドクローズドループ (Hybrid Closed Loop:以下、HCL)テクノロジーを搭載したミニメド770Gシステム(日本メドトロニック社)が登場しました。このシステムでは、患者さんの過去のインスリン注入履歴と、CGMのセンサーグルコース値に基づき、注入する基礎インスリンをポンプが自動で調整します。日中だけでなく夜間も含め24時間、血糖値を目標範囲内に保つためのサポートをすることを可能とする画期的なインスリンポンプです。当院でも多くの患者さんが、HCLテクノロジーを搭載した最新式のインスリンポンプを愛用されています。また、チューブがなく、体に貼り付けるタイプのインスリンポンプ(パッチ式インスリンポンプ、メディセーフウィズ(テルモ社))も取り扱っています。
インスリンポンプの導入については、まず、インスリンポンプ療法の適応があるかどうかを検討し、適応がある患者さんに対しては、患者さんの状況に応じて「外来」または「入院(1週間)」での導入を提案しております。また、かかりつけの医療機関からご紹介いただき、当院でインスリンポンプを導入し、安定した段階で治療の主体をかかりつけ医の医療機関に移行し、当院では3~6か月ごとにフォローアップする「インスリンポンプ連携」も行っております。
2018年11月から「インスリンポンプ外来」(毎週木曜日、担当:利根 淳仁)を開設しております。インスリンポンプの導入依頼やインスリンポンプ治療に関する疑問など、お気軽にご相談ください。
※当院では1型糖尿病患者さんの治療に力を入れており、ペン型注射で治療中の1型糖尿病患者さんに対しても、カーボカウント法の習得や生活スタイルに合わせたインスリン注射の工夫など、1型糖尿病に特化した指導を行っております。
(画像提供:日本メドトロニック株式会社、テルモ株式会社)
SAP療法【ハイブリッドクローズドループ(Hybrid Closed Loop)システム】
- ピンク:自動で調整された基礎インスリン注入
- 青棒:ボーラス注入
- 橙:オートモード開始前1か月:155±39 mg/dL, GMI 7.0%, TIR 75%, TAR 25%
- 青:オートモード開始後1か月:130±36 mg/dL, GMI 6.4%, TIR 89%, TAR 10%, TBR 1%
- GMI: glucose management indicator, センサーグルコース値から推定したHbA1c値に相当するもの
- TIR: time in range, 目標血糖範囲内(70-180mg/dL)に入る時間帯の割合
- TAR: time above range, 目標血糖範囲を超える(>180mg/dL)時間帯の割合
- TBR: time below range, 目標血糖範囲を下回る(<70mg/dL)時間帯の割合
糖尿病の医療連携について
岡山済生会総合病院糖尿病外来では病診連携を推進しています。病診連携とは病院(専門医)と診療所・医院(かかりつけ医・ホームドクター)との間で、連携をとりながら治療を勧めていく診療の形態です。専門医とかかりつけ医の二人が主治医となり、治療を勧めさせていただきます。
クリニカルパスとは、検査や治療の流れをスケジュール表のようにまとめたものです。クリニカルパスを用いることでいつ何をするかが容易に把握することができるようになります。かかりつけ医と専門医が共通の診療計画を持つことで、質の高い医療を継続的に提供できるようになります。
病診連携での治療をご希望の方はご遠慮なくお申し出ください。
クラウド糖尿病教育資材共有システム(i-Diabetes Education Tools)のご案内
糖尿病センター長 中塔 辰明
当院糖尿病センターでは、糖尿病教育資材を共有するためのシステムとして、クラウド糖尿病教育資材共有システム:i-Diabetes Education Toolsの運用を開始致しました。
このシステムは、当院で使用している糖尿病教育資材を、連携医療機関の先生方にも使用していただき、糖尿病患者教育のツールとして利用していただくものです。当院糖尿病センターでは平成22年7月にiPad9台を購入し、糖尿病の各スタッフに配布、院内での糖尿病教育ツールとしてすでに利用を開始しておりますが(図1)、今回このシステムを連携医療機関の先生方にも利用していただければと考えております(図2)。糖尿病治療においては患者教育が何よりも重要ですが、iPadはそのためのツールとして極めて高いポテンシャルを有しているものと考えています。ご存じのようにiPadは一瞬にして起動し、利用したいコンテンツをすぐさま患者さんに提示して示すことができます。画像や動画を用いることで非常にわかりやすい説明が可能となり、しかもそれを患者さんの手元で、場合によっては患者さんに操作してもらいながら説明できることも大きな特徴です。外来の待ち時間を利用した患者指導にも利用可能と考えられます。クラウド上に教育資材を保管することで、必要なときに必要な資材を利用することもできるようになります。こうしたiPadの有用性を活かして、患者教育の一つのツールとして利用するものでございますので、すでにiPadをご利用の先生方、これからiPadの導入をご検討中の先生方は是非とも参加をご検討いただければ幸いです。
なお、本システムは岡山県糖尿病医療連携推進事業におきまして、県下全域で利用できるシステムへと発展させていただき、現在では「おかやまDMネット」(https://www.ouhp-dmcenter.jp/project/dm/)にて利用していただくことができるようになっています。「おかやまDMネット」ホームページの「糖尿病教育資材共有システムSODET(https://www.ouhp-dmcenter.jp/project/projectedu/)をご覧いただければ幸いです。当院の教育資材もそちらで共有していただくことができるようになっています。
当院糖尿病センターでは、先生方とよりよい連携体制が構築できるよう、“顔の見える連携”をめざして取り組んで参りたいと思っておりますので、今後ともご指導、ご鞭撻を賜りますよう何卒よろしくお願い申し上げます。
糖尿病と歯周病について
糖尿病と歯周病は、共に代表的な生活習慣病ですが、両者はお互いに密接に関係していることが、近年の研究で明らかとなってきました。
歯周病は、歯と歯茎の間(歯周ポケット)に入り込んで繁殖した細菌による慢性の炎症性疾患ですが、その発症や進展には、からだの抵抗力が大きく関与してい ると言われています。糖尿病により高血糖状態が続くと、からだを守る免疫細胞の機能低下し、歯肉組織の代謝異常、血管壁の障害等が起こり、歯周病が発症・ 悪化しやすくなります。
逆に、歯周病が存在すると、歯周病菌により産生される成分が、歯肉から血管内に入り込み、血糖値を下げるホルモンであるインスリンの働きを悪くします。す なわち、歯周病が存在すると、血糖値は上昇し、そのためさらに歯周病が進行していくという悪循環に陥ります。
この悪循環を断ち切るには、日頃から歯周病の有無をチェックし、歯石の除去などの口腔ケアをきちんと行うことと、糖尿病のコントロールをできるだけ良好に保つことが重要です。
最近の研究では、歯周病をコントロールすることで、糖尿病のコントロールが改善する可能性も示唆されていますので、糖尿病治療中の患者さんは年に1回は歯科受診を行い、歯周病のチェックを行うことをおすすめいたします。