適度な歩行で健康に!歩行のすすめ

歩くことは体に良いとよくいわれます。
しかし、実際にどのような効果があるのでしょうか。また、どのくらい歩けばよいのでしょうか。

このページでは歩行による健康への効果と効果的な方法、また歩くことを習慣づけるために何に気をつければよいのかについて、まとめます。

歩く人の足元のイメージ写真

 「歩く」ことで得られる5つの効果

1.生活習慣病の予防

生活習慣病とは、偏った食生活や睡眠不足、運動不足、喫煙、ストレスなどの積み重ねが原因となって発症する、がん(悪性新生物)、心疾患(狭心症や心筋梗塞などの心臓病)、脳血管疾患(脳梗塞やクモ膜下出血など)といったさまざまな病気のことをいいます。生活習慣病は、日本人の死因の半数以上を占めています。

有酸素運動である歩行・ウォーキングは、心肺機能を向上させる効果があります。心臓の働きを強化し、血液循環を促進するため、血管の老化すなわち動脈硬化のリスクを低減することにつながります。血管が柔らかくしなやかになると、血管にかかる圧力は少なくなり、血圧も下がりやすくなるのです。これにより、高血圧や心臓病、脳梗塞などの心血管疾患の発症リスクが軽減します。

また、歩くことでエネルギー消費を促し、基礎代謝を向上させることで脂肪燃焼・肥満予防に役立ちます。
肥満は糖尿病や高血圧、脂質異常症など生活習慣病の発症の危険因子の1つです。2014年の厚生労働省白書では運動をよく行う人は生活習慣病にかかる可能性や死亡率が減少するという結果が出ています。

散歩など、定期的に適度な運動を行うことは、健康で長生きするために大変重要です。

2.睡眠の質の向上

不規則な生活を送っている人は睡眠不足になりがちです。

寝不足の原因として、自律神経の乱れが考えられます。「歩く」といった足を使う運動は副交感神経の働きを活発にするためリラックス効果が得られ、睡眠の質が向上します。

寝起きの良い人物のイメージ写真

3.ストレス軽減

歩行やウォーキングといった有酸素運動を続けることで、脳の血液中にβベータエンドルフィンというホルモンの分泌を促すといわれています。βエンドルフィンは「幸せホルモン」ともいわれ、歩くことによって心地よい気分や幸福感をもたらします。また、公園など自然のなかを歩くことはリフレッシュ効果も得られるため、ストレスや不安の軽減につながります。

4.認知症の予防

運動と認知症の関連に関する研究は世界中に数多く存在し、日本においても2016年の九州大学の研究で、身体的な活動が日本人の認知症のリスク、特にアルツハイマー型認知症のリスクを軽減することが報告されています。

運動をすると脳の神経を成長させるタンパク質が海馬かいば(記憶を司る部分)で多く分泌され、血流もよく流れるため、海馬の機能維持や肥大・血流改善に効果をもたらすと考えられています。

5.骨密度の向上

歩行によって体に重みがかかることで骨に適度な負荷が加わり、骨密度の維持や向上につながります。

歩く人の足のイメージ写真

どれくらい歩いたらいいの?

歩数の推奨目標については厚生労働省や関連する機関・組織によって微妙な違いがあります。「何歩が良いか」という問いには明確な答えはありません。歩数の目標は個人の健康状態や能力、生活環境によって異なるため、自身にあった適切な目標設定をすることが重要です。

どのくらい歩けば、どんな病気を予防することができるのか、実際にそれを明らかにした興味深い研究がありました。その研究結果を表にまとめたものを下に示しておりますので、ぜひ目標設定の参考にしてみてください。

歩数早歩き時間予防(改善)できる可能性のある病気
2,000歩0 分寝たきり
4,000歩5 分うつ病
5,000歩7.5分要支援・要介護
認知症(血管性認知症、アルツハイマー病)
心疾患(狭心症、心筋梗塞)
脳卒中
7,000 歩15 分がん(結腸がん、直腸がん、肺がん、乳がん、子宮内膜がん)
動脈硬化
骨粗鬆症
骨折
7,500 歩17.5 分筋減少症
体力の低下(特に75 歳以上の下肢筋力や歩行速度)
8,000 歩20 分高血圧症
糖尿病
脂質異常症
メタボリックシンドローム(75 歳以上の場合)
9,000 歩25 分高血圧
高血糖
10,000 歩30 分メタボリックシンドローム(75 歳未満の場合)
12,000 歩40 分肥満
出典:地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター運動科学研究所NEWS no.265 2014.11

習慣化するためのポイント

具体的な目標設定

現実的で達成可能なものであることが大切です。

最初は少ない歩数から始めて、徐々に増やしていくとよいでしょう。

カレンダーとボールペンのイメージ写真
ルーティン化

歩く時間や場所をルーティン化することで歩くことを習慣化しやすくなります。

毎日のスケジュールに歩行時間を組み込みましょう。

時計のイメージ写真
楽しさをみつける

音楽を聴きながら歩く(周囲の安全に気をつける)、美しい公園や景色のよい場所を選んで歩くなど、歩行を楽しむ要素を取り入れましょう。

花のある遊歩道のイメージ写真
サポートを求める

家族や友人と一緒に歩くことで、励まし合いやモチベーションの共有ができます。

地域のコミュニティやグループに参加することもおすすめです。

記録をつける

歩数や距離を記録することで、成果がわかりやすくなり、運動を続けるモチベーションにもなります。歩数計やスマートフォンのアプリなどを活用して記録するようにしましょう。

歩数計のイメージ写真

厚生労働省では健康づくりのための身体活動指針を作成しており、ホームページに掲載されています。
ぜひ参考にしてみてください。

ウォーキングをする人物の後ろ姿のイメージ写真

※本記事は広報誌「やわらぎ」No.185(2023年秋号)に掲載したものをWEB用に再編集したものです。

この記事を書いた人

三浦 早紀みうら さき


所属

岡山済生会総合病院 リハビリテーションセンター

職種

理学療法士

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