顔面に多くみられる基底細胞がん(BCC)

診療部長(皮膚科) 荒川 謙三

“皮膚がん”と言われる疾患は非常に多くありますが、その中で“基底細胞がん(BCC)”は頻度的に多くみられる疾患の一つです。私はこの最近5年間で136例の症例を治療してきました。致死的な疾患ではないため一般的な“がん”とは異なりますが、80%以上が顔面、特に眼瞼、鼻およびその周囲に多く生じるため、摘出後の皮膚欠損創に対する皮膚の再建が問題になります。しかし、早い時期に診断することができれば小さな皮膚切開ですみ、単純に縫縮することもできますので術後の傷も目立ちません。
そこで、BCCの早期診断、鑑別について解説し、その後で大きくなったときの手術例について、代表的症例をご紹介したいと思います。

臨床症状、診断

典型例では黒い結節、局面であり、中央に潰瘍が見られます(図1)。触診してみると皮下に浸潤を強く触れますので、皮膚科医にとって診断は比較的容易です。黒い丘疹、結節という症状の時にはあまり気にならず、「時々出血するようになった。」という訴えで受診されることが多く見られます。しかし、1~2mmの黒色斑または丘疹の場合の診断はなかなか困難です。以前であれば、BCCの可能性は低いが確定できない症例は、もう少し経過を見せてもらう か、もしくは少し疑わしければパンチで全摘(小さいので)して組織学的に診断を付け、もしBCCであれば再度拡大して摘出をすることにしていました。しかし、最近では「ダーマスコープ」という道具を用いて病変を拡大して観察し、小さな病変でも診断することが可能になりました。(図2)は、マクロではまさかと思っていた症例ですが、ダーマスコープで観察しますとBCCに特徴的な太い血管拡張、小さな潰瘍などが見られ、診断できました(図3)。このようにダーマスコープはマクロ(眼)とミクロ(顕微鏡で見る病理組織像)の中間に位置する検査法であると考えられます。

症例画像

(図1)
潰瘍と辺縁の黒色斑を伴う隆起
(図2)
小さな黒色斑
(図3)
中央の小潰瘍、血管拡張、黒色斑

手術症例

56歳男性の鼻尖部に生じていたBCC。横、深さともに十分離して摘出。皮弁を作成し、皮膚欠損部を覆い終了。術後は、整容的にも満足いく結果が得られた。

症例画像(※手術写真を含みます。苦手な方はご注意ください。)
【術前】
【術中】
※画像上、モノクロにさせて頂いています。
【術後13ヶ月】

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