卵巣腫瘍
卵巣腫瘍とは
良性の卵巣腫瘤には、機能性嚢胞と腫瘍が含まれます。そのほとんどは無症状です。
卵巣腫瘍の種類
- 機能性嚢胞は、卵胞嚢胞や黄体(黄体嚢胞)から生じます。大部分の機能性嚢胞は直径1.5cm未満です。非常にまれに15cmに達するものがありますが、8cmを超えるものは通常ほとんどみられません。機能性嚢胞は、普通は数日から数週間で自然に消散します。黄体嚢胞の場合、嚢胞内腔に出血し,卵巣被膜を膨張させたり、腹膜内に破裂したりすることがあります。
- 良性卵巣腫瘍は、普通緩やかに成長し、悪性化はまれです。良性卵巣腫瘍には多数の種類があります。
- 良性嚢胞性奇形腫:最も一般的な良性卵巣腫瘍です。3種の胚細胞層全てに由来した腫瘍です。そのうち外胚葉性組織からなるものは、別名類皮嚢胞とも呼ばれています。
- 線維腫:最も一般的な固形の良性卵巣腫瘍であり、成長が遅く、通常直径7cm未満です。
- 嚢胞腺腫:卵巣に生じた液体貯留性の腫瘍です。全良性卵巣嚢腫の90%を占めるとされています。さらっとした液体が貯留している場合は、漿液性嚢胞腺腫、ゼリー状の液体が溜まっている時は粘液性嚢胞線種と呼ばれています。
症状
多くの機能性嚢胞および良性腫瘍は無症状です。黄体嚢胞が出血した場合は、疼痛や腹膜刺激徴候を引き起こすことがあります。また、嚢胞や腫瘤(通常4cm以上)の付属器捻転(ねじれること)により、重度の腹痛が引き起こされることがあります。
診断
腫瘤は通常偶発的に発見されますが、症状や徴候により、わかることがあります。妊娠時はその影響で卵巣が腫れている場合があり、診断に注意が必要です。通常は経腟超音波検査で診断を確定します。結果が不明確な場合には、MRIやCTが役立つことがあります。画像診断上、がんの特徴(例:嚢胞性+固形成分、表面の突出、多房性、不整形など)がみられる腫瘤は切除する必要があります。
採血
採血による腫瘍マーカーは特定の腫瘍の診断に有用です。生殖年齢の女性の場合、5~8cmの単純な薄壁性の嚢胞性腫瘤(通常は卵胞)は、定期的な診察で良いとされています。
治療
- 経過観察:8cm未満の卵巣嚢胞の多くは治療不要なことがあります。連続的に超音波検査を実施し、消失を確認していきます。
- 手術療法:手術により嚢胞を切除します(卵巣嚢胞切除術)。3か月以上持続している5~8cm以上の嚢胞、および腹膜炎を伴う出血性黄体嚢胞については、必要な場合には手術を行います。嚢胞性奇形腫は、可能な場合には、嚢胞切除術により切除する必要があります。10cmを超える線維腫、嚢胞腺腫、嚢胞性奇形腫、および卵巣と分離して外科的に切除することができない嚢胞には、卵巣摘出が必要になることがあります。
手術療法には以下の方法があります。
- 開腹卵巣腫瘍摘出:下腹部を5~10cm切開し、腫瘍を摘出、あるいは卵巣ごと切除する方法です。腫瘤が10cm以上の場合には、こちらの方法を選択することが多いです。
- 腹腔鏡下腫瘍摘出:臍部に2.5~3.5cmの傷をつけ、そこから腫瘤を摘出します。他の部位から鉗子を挿入し操作を行うため、5mmの傷が数か所に付くことがあります。10cm以内の腫瘤の場合には、当院ではこちらの方法を選択することが多いです。